← ブログ一覧に戻る
コードシティが「気候変動領域」に取り組む理由
2021-12-05

こんにちは、コードシティ株式会社の加藤です。今回は、コードシティが気候変動領域に取り組む理由について発信させていただきます。エネルギー革命の歴史なども書いてますので、最後まで読んでいただけると嬉しいです!

数十年の経営に最も重要な領域選び

私は24歳の頃、RELATIONS株式会社という会社を共同創業し、10年と少し経営に携わりました。1度目の起業時は、準備期間もほとんどなかったため、共同創業者の中でミッションやビジョンを作らずにスタートしました。

結果として、そこから会社は成長していったのですが、方向性がブレなくなるまでにかなりの時間を使いました。

また、大きなリスクを取って世の中を大きく前進させるスタイルの経営はできず、それが唯一の心残りでした。

この経営スタイルの話は、以下の記事のatama plus社の代表稲田さんの話が分かりやすいです。

世の中には色々なベンチャー企業があり、色々な成功パターンがあると思いますが、僕は大きく3つのタイプに分かれる気がしていて。まずは「伸びる事業をつくりたい」人たち。それから、「楽しく働ける、いい会社」をつくりたい」人たち、そして最後は「いいサービスで世の中を変えたい」人たちかなと。

【連載:成長組織のリアル】カルチャーへの投資が「変化に強い組織」を作った。atama plusの軌跡

この話に当てはめると、私は3つ目の「プロダクトやサービスによって世の中を大きく前進させたい」という考え方です。前職はとても良い会社でしたが、2番目のタイプの会社(楽しく働ける、いい会社)だったように振り返っています。

もちろん、これらは企業の1つの在り方でしかありませんので、良し悪しの話ではありません。

ですが、自分にとっての起業とは、リスクを取って世の中を前進させることであり、その価値観やこだわりに気づけたことは大きな財産です。

そのため「次の会社では、数十年かけても掘りつくせない重要な領域を選び、事業によって世の中を大きく前進させる」と決めました。

そこで、2020年から2021年にかけては焦って事業を始めず、宇宙、建設、メタバース、気候変動など、興味がある領域のインプットやアウトプットをし、会社が取り組む領域をじっくりと決めることにしました。

その決定が、今後数十年の経営にとって最も重要な意思決定になると考えました。

様々な領域のインプットやアウトプットを行う中で、自分にとって最も価値ある領域だと感じたのが気候変動領域でした。

太陽エネルギーの摂取が人類を進化させた

生物の成り立ちを考えていくと、エネルギーの重要性を再認識します。

植物が太陽エネルギーを摂取し光合成を行い、デンプンを作り養分とします。

その植物を草食動物が食べ、草食動物を肉食動物が食べます。そして、人間は草食動物や時には肉食動物も食べます。

つまり、元をたどれば、すべての生物は太陽エネルギーからできているとも言えます。

人間は様々なテクノロジーを駆使し、エネルギー革命を起こし、太陽エネルギーをより多く利用できるようになってきました。そして、すべての生物間で行われているエネルギー獲得競争に勝ってきたとも言えます。

これまでに起きたエネルギー革命は「エネルギーをめぐる旅」という書籍にて、とても分かりやすい段階分けがなされていたので、引用しながら紹介します。

エネルギーをめぐる旅――文明の歴史と私たちの未来

第1のエネルギー革命:火

約150万年から100万年前に、人類は生物の中で唯一火を利用できるようになったと推定されています。火の明かりと熱で、肉食獣は洞窟に近づくことができなくなり、木の上に登らずとも安心して眠ることができるようになりました。

苦労して採った食べ物を他の動物に取られることもなくなったのです。

また、食べ物に火を通すことで、雑菌を殺せるようになり、消化器官への負担を軽減できるようになりました。それにより、人間は摂取できるエネルギー量を最大化できるようになりました。

つまり、第一のエネルギー革命である「火」により、人間は自然界の中で自らの立場を大きく引き上げることができました。

なお、人間は火を使った調理をすることで消化にかかるエネルギー負担を減らし、胃腸を相対的に小さくすることに成功したとも言われています。

そして、本来、消化器官が行うはずの仕事を火が行うことで、余剰エネルギーを生み出し、そのエネルギーは脳へと投資され、人間の脳が大きくなったということも言われているのです。

第2のエネルギー革命:農耕

約1万年前に始まったと言われる「農耕」が第2のエネルギー革命です。ムギ、イネ、トウモロコシ、などの栽培が容易で保存に長ける植物を大量に育てることができるようになったことで、人間は更にエネルギー摂取量を増やしました。農耕生活が始まる以前の今から約1万2000年前の時点では500~600万人だった世界人口は、今から2000年前には約6億人まで到達したと言われています。これは、「農耕」によって人類が利用できるエネルギー量が100倍に増えたとも言えます。

第3のエネルギー革命:蒸気機関

第3のエネルギー革命は「蒸気機関」です。蒸気機関以前にも、風車、水車の発明、など様々な動力機械の発明がありました。これら個々の発明も、エネルギー利用量を増やしたという意味では、エネルギー革命と言えるかもしれません。しかし、これらは天候や地形の制約に基づいたものでした。水車は水が流れている場所にしか設置できません。

こうした自然環境の制約を解き放ち、社会の仕組みそのものも変えてしまったものが「蒸気機関」です。

「蒸気機関」とは、石炭を燃やし水を加熱することでできた水蒸気の熱エネルギーを使ってピストンを動かし、それを運動エネルギーへと変換する仕組みです。

つまり、熱エネルギーを運動エネルギーに変換することができるようになったのです。この点が、それまでの風車や水車などの動力機器のいずれとも異なる革新性です。

水車の場合は、水車を設置するために最適な地形にしか設置できませんでしたが、蒸気機関は違います。

石炭を運び、蒸気機関を設置さえすれば、どのような場所でも運動エネルギーを生み出せるのです。

これにより、農耕をする(大量の太陽エネルギーを摂取する)上での労働の担い手であった馬や牛、文明の闇である奴隷等の仕事を、機械が代わりに行える可能性が開けました。

つまり、蒸気機関は社会構造が大きく変わるきっかけとなった言えます。

第4のエネルギー革命:電気

蒸気機関の発明の後、「電気」の発明が起こります。電気の発明に関わった人物は様々ですが、多くの人に知られているのはエジソンでしょう。

電気はエネルギーの移送を可能にした発明です。蒸気機関だけでは蒸気機関がある場所でしか運動エネルギーを生み出せません。

しかし、電気の発明によって、エネルギーを電気に変え移送することで、移送先で使うことが可能になったのです。例えば、家には蒸気機関はないですがエネルギーを使えますよね。

これにより、人類が利用できるエネルギー量は爆発的に増えました。

普段の生活で当たり前に使える大量のエネルギーは、第4のエネルギー革命のおかげとも言えます。

第5のエネルギー革命:人口肥料

第5のエネルギー革命は「人口肥料」です。19世紀初頭、ヨーロッパでは化学分析の手法が生み出され、様々な物質や元素が発見されるようになりました。

ドイツの科学者であるリービッヒは、化学分析の手法を使い、窒素、リン、カリウムが肥料の主成分であることを突き止めました。

そしてその後、肥料の主成分である窒素を人工的に固定するハーバー・ボッシュ法が開発されたのです。

ハーバー・ボッシュ法を使って窒素を固定化できるようになったことで、人工的なエネルギーを投入して農作物を創れるようになり、食糧生産における自然界の限界を突破できるようになりました。

人口肥料と電気機械を合わせることで、トウモロコシなどの穀物を工業製品化することに成功し、大量生産できるようになったのです。

結果、1900年初頭は16億人程だった世界人口は、1950年には25億人を超え、2000年頃には60億人を突破するに至りました。

以上、第1~5のエネルギー革命を見るとわかるように、太陽から注がれるエネルギーを人類が大量に求め続けた結果が、現代社会です。

人類は、様々な技術を発明し、地球上で行われる太陽エネルギーの獲得競争に勝ち、膨大な太陽エネルギーを利用・独占するようになりました。

これらのエネルギー革命は、人間にとって正の側面が大きかったことは疑いはないですが、負の側面もあります。

負の側面の最たるものが、現代に顕在化してきた気候変動問題です。

そして、気候変動問題を緩和しつつエネルギー需要をまかなうことこそ、第6のエネルギー革命ではないでしょうか。

そう考えると、気候変動問題こそベンチャー企業が取り組むべきテーマだとも言えます。

なお、第6のエネルギー革命は、これまでのエネルギー革命のように単にエネルギー利用量を増大させれば良い、というものではなくなっています。

気候変動問題が顕在化したことで、過去数百万年で複数回かけて起きてきたエネルギー革命とは別の性質のエネルギー革命が求められています。

今こそ、人の欲求と気候変動問題の解決が合致するタイミング

気候変動問題がいくら人類にとって重要な問題と言えるとしても、取り組むタイミングが合わなければベンチャー企業としては失敗してしまいます。

ですが、今はベンチャー企業として気候変動問題に取り組むのに最適なタイミングだと考えました。

実は、気候変動問題への興味は以前からありました。実際、前職にて環境領域の事業として2012年にサイクルシェアリングシステム「COGOO」を開発し、リリースしました。

当時はスマートフォンで開錠可能な自立型のサイクルシェアは世界でも珍しいシステムでした。

当時のことを思い出してみると、企業による気候変動等の地球環境領域の取り組みは、CSR等の文脈で捉えられることが多かったように思います。

「本業を前進させるために投資として気候変動問題に取り組む」というよりは、「社会的責任に応えるためにコストとして気候変動問題に取り組む」という印象でした。

そこから10年ほど経った2021年現在、企業による気候変動への取り組みは、大きな変革期を迎えていると感じます。

2015年に採択されたパリ協定、IPCCの各種レポートによって、気候変動問題が人為的なものであることへの確証が強まりました。

また、今後気候変動への対策がなされなかったシナリオの気温上昇等の負の影響も明確になってきました。(詳しくは以下の記事を参照)

CO₂の排出量ゼロは実現するか?2050年に世界が実現すべきカーボンニュートラルとは

ハリケーンなどの自然災害などで企業が損失を受ける事例も出てきています。また、一般消費者の環境意識も高まっています。

それらの動きに伴い、投資家行動に大きな変化が起き始めました。

運用資産額9兆ドル(約990兆円)を超えるとされる世界最大の資産運用会社BlackRockは「気候変動問題に取り組まない企業への投資を控える」と表明しています。

これは正義感や綺麗ごとではなく、とても合理的な判断だと思います。

例えば、気候変動のリスクが顕在化している現代社会で「気候変動リスクを考慮せずに保険商品を作る保険会社に投資をしたいと思うか?」と問われれば、投資収益を上げるという側面からもリスクが高く「NO」という答えが出るのではないでしょうか。

そして実際、ESG投資の規模は全世界で約3,300兆円となっており、気候変動領域への取り組みを行わない企業にはお金が集まらない世の中になりつつあると言えるのです。(詳しくは以下の記事を参照)

世界で3,300兆円の規模となるESG投資とは?

この流れは投資家の合理的判断に基づいているので、一過性のものではなく加速していくと思われます。

「投資によって収益を上げたい」という人間の欲求が気候変動問題の解決と合致し始めているのが、今のタイミングと言えます。

倫理観や正義感を持つ企業だけでなく、収益を上げたいという欲求を持つすべての企業が、気候変動問題に向き合わないといけない時代がやってくることが想像できます。

これこそがベンチャー企業を後押しする時代の流れであり、気候変動領域を選ぶ上で最も大きなポイントだと考えました。

第6のエネルギー革命のためにすべきこと

気候変動領域を選んだ後にすべきことは、具体的な事業領域の選定です。

気候変動問題の解消に貢献するためには、インパクトが大きい領域に取り組むべきですが、CO₂排出量で世界第5位の日本をサンプルにその領域は考えました。

日本の部門別のCO₂排出量は以下です。

2018年の日本の部門別CO₂排出量(電気・熱配分前)
「経済産業省 2018年度温室効果ガス排出量分析(CO₂全体)」より引用

電気・熱配分前排出量は、CO₂の排出量を電力や熱の生産者からの排出として計算する考え方です。

エネルギー転換部門、産業部門、運輸部門、業務その他部門、工業プロセス、など企業・公共部門からの排出が88.5%を占めます。

2018年の日本の部門別CO₂排出量(電気・熱配分後)
「経済産業省 2018年度温室効果ガス排出量分析(CO₂全体)」より引用

電気・熱配分後排出量は、CO₂の排出量を電力や熱の消費量に応じて各部門からの排出として計算する考え方です。エネルギー転換部門、産業部門、運輸部門、業務その他部門、工業プロセスなど、企業・公共部門からの排出が76.9%を占めます。

つまり、CO₂排出の大部分は、企業・公共部門の活動によるものと言えます。

そして今、企業の温室効果ガスの削減には、大きな追い風が吹いています。具体的には、以下の2記事に記載しています。

CO₂の排出量ゼロは実現するか?2050年に世界が実現すべきカーボンニュートラルとは

世界で3,300兆円の規模となるESG投資とは?

世界各国が2050年にカーボンニュートラル社会を目指すという目標を掲げています。そして国がその目標を達成するために、上場企業等に対して温室効果ガスの算定・報告を義務化しています。また、投資家の投資基準にESG観点が明確に組み入れられており、全世界でESG投資が約3,300兆円の規模になっています。それらが、企業の温室効果ガス削減行動を後押しする圧力となります。

このように、気候変動問題を解消しようと思えば、企業の温室効果ガスにフォーカスすることが合理的です。

そして、CO₂の排出源はエネルギー起源が93.1%なので、企業のエネルギー利用の在り方を変えるアプローチが最もインパクトが大きいと言えます。

日本のCO₂排出の起源

気候変動問題の解消のためには、企業のエネルギー利用の在り方を変える、つまり企業が使うエネルギーをできる限り再生可能エネルギーに転換していくことが重要です。これは当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、気候変動問題は範囲が広く、因果が複雑であるため、数値から落として取り組む領域について結論付けることが重要です。

そして、企業が使うエネルギーを再生可能エネルギーに転換するためには、以下の2点が必要です。

1. 再生可能エネルギーの供給能力の増加

2. 再生可能エネルギーの供給不安定性を埋めるためのグリーン水素等を使った蓄電技術の発展

低コストなグリーン水素を生成し、蓄電に利用する方向性の事業も検討しましたが、水電解装置の開発などの投資規模は大きくなにより水素がインフラとして普及する時期がまだ読めません。

そのため、ベンチャー企業が初期に手掛ける事業としては外すべきだと考えました。

一方で、再生可能エネルギーの供給量を増やすことについては、まだまだ余地があります。

再生可能エネルギーで大きな可能性があるのは、風力と太陽光ですが、風力は水素と同様ベンチャー企業が初期に手掛けるには少しサイズ感が大きすぎるため、太陽光に着目しました。

地球に降り注ぐ太陽エネルギーは1秒間に約42兆キロカロリーに達し、すべての太陽光を電気に変換できれば、わずか1時間で世界の年間消費エネルギーをまかなえてしまうとの試算もあります。

しかしながら、2019年の全世界の電力需要に対する太陽光発電量は約3.3%で、ここ数年で太陽光発電の普及がかなり進んだ日本でも、まだ約7.3%です(*)。

(*)TRENDS IN PHOTOVOLTAIC APPLICATIONS 2020より

つまり、まだまだ太陽光発電のポテンシャルがあるということが言えます。

ただし、既存の太陽光パネルの製造業界については、中国企業が世界を席巻しており、大半の日本企業から見れば一旦勝負が着いたと言えると思います。これまでの太陽光発電のビジネスモデルは、メガソーラーや建物の屋上に太陽光パネルを設置するモデルで、グリッドパリティ(*)を実現できるか?が勝負の世界です。資本力によってスケールメリットを生み出し、太陽光パネルのコストを極限まで下げる戦いであり、投資規模を見誤ると一気に敗者になってしまう市場でした。

(*)再生可能エネルギーの発電コストが、既存の系統からの電力コストと同等かそれ以下になる点(コスト)のこと。

しかしながら今後は、先ほどの太陽光のポテンシャルの話も含め、新たな事業機会が生まれると予想できます。

具体的には以下のように、メガソーラーや建物の屋上以外の様々な場所(農地、ビルの壁面、窓、自動車のボディ、屋内など)に太陽光発電を設置するユースケースが一気に広がる可能性があります。

例えば、建物に組み込まれる太陽光発電システムをBIPV(Building Integrated Photovoltaics)、建物に後から組み込む太陽発電システムはBAPV(Building Attached Photovoltaics)と言います。

日本においては、BIPVのみでも導入ポテンシャルは国内総発電量の約8.9%(2016年時点)に相当すると言われており(*)、相当のポテンシャルがあるとわかります。

(*)「BIVPモジュールおよびシステムの国際標準化に向けた建築的技術的課題」より引用

営農型太陽光発電という、農地に支柱を立てて上部空間に太陽光発電設備を設置する新たなユースケースも期待されています。

弊社の試算によれば営農型太陽光発電の最大の導入ポテンシャルは、一次エネルギー供給量の約14%まで到達する可能性もあります。

土地を切り開いてメガソーラー等を設置することも必要ですが、土地開発には限界があります。現在すでに存在している農地や人工物を発電主体にできれば、より環境に優しいとも言えます。

また、全世界のエネルギー需要を再生可能エネルギーでまかなう未来を考えると、世界には日本のような国土が狭い国もたくさんあり、そのような地域では屋根やメガソーラー以外の新たな太陽光発電のユースケースの開発が必須と言えます。自家発電できる農地や人工物が増えれば、国家のエネルギーセキュリティ問題への対策にもなりますし、中央集権型のエネルギーシステムから分散型エネルギーシステムへの移行にも大きく寄与します。

・第6のエネルギー革命を実現するためのコア領域の1つ

・十分なマーケットポテンシャルがある

・適切な参入難易度

これらの理由からコードシティは、太陽光発電にフォーカスを定め、その中でもこれまでのビジネスモデルではない新たな太陽光発電のユースケース(営農型太陽光発電、BIPV・BAPV、等)で事業機会を探ることにしました。

なお、気候変動問題は、単に技術革新で解決できない問題であり、技術革新と共にエネルギー利用量を増大させ続けるライフスタイルの転換も同時に求められます。そこら辺の話はまた別の記事で発信できればと思います。

今回の記事は以上となります。興味をお持ちいただいた科学者の方、メーカーでのモノづくりの経験があるエンジニアの方、太陽光発電システムのエンジニアの方は、以下のURLよりコンタクトをお待ちしております!

カジュアル面談のお申込みはこちら

← ブログ一覧に戻る